ARMプロセッサとは?

ARM プロセッサとは,英国 ARM 社で開発・設計されている RISC プロセッサで,優れたシステム性能や低消費電力,効率的な命令セットといった特徴をもち,用途に応じたさまざまなバリエーションのプロセッサファミリを持つことから,最近のスマートフォンをはじめとするモバイルデバイスで特に広く使われています.また,ARM 社は自社で開発したプロセッサを自社で製造・販売するのではなく,プロセッサ部の IP として,世界各国の SoC メーカにライセンス提供しています.各 SoC メーカは,システムに必要不可欠である高機能・低消費電力なARMプロセッサ IP を利用し,各社独自の SoC を設計・製造します.

ARMプロセッサのロードマップ

ARM プロセッサの製品群は,歴史的には ARM1 からはじまって ARM11,現在の Cortex シリーズに至っていますが,現在事実上使われているのは,ARM7 / ARM9 / ARM11 (Classic プロセッサシリーズ)と,最新プロセッサである Cortex シリーズです.

ARM7

このプロセッサは,コード効率と低消費電力という点で主に携帯電話に利用されて普及しましたが、現在でもさまざまなアプリケーションで広く利用されています.特に,ARM7TDMI と呼ばれるプロセッサは,現在も市場で最高の出荷数を誇る32ビット プロセッサとして君臨していますが,今後は Cortex-M0 や M3 といった新規のプロセッサに置き換えが進むものと思われます.

ARM9

ARM7 の3段パイプラインから5段パイプラインへ,さらに命令とデータのメモリ空間が分かれているハーバードアーキテクチャが採用され性能の向上が図られています.さらに,信号処理(DSP),Javaアプリケーションに対応するプロセッサで,高性能でありながら消費電力に配慮する必要がある機器向けに現在も使用されています.

ARM11

ARM9 からさらに性能向上が図られ,小面積設計の350 MHzから,速度を重視した設計の1 GHz(45/65 nm)まで幅広いパフォーマンスのプロセッサです.ARM11 プロセッサ向け ソフトウェアは,旧世代のすべてのARM プロセッサと互換性があるほか,メディア処理を意図した 32ビット SIMD, OS のコンテキスト切り替え性能を向上する物理タグのついたキャッシュ、ハードウェア レベルでのセキュリティ適用を可能にする TrustZone,リアルタイム アプリケーションを可能にする密結合メモリが導入されています.

 ARM の最新プロセッサ Cortex シリーズ

現在のARM の最新プロセッサファミリは,Cortex シリーズと名づけられています.Cortex プロセッサには,Cortex-A (Application) ,Cortex-R(Real time) と Cortex-M(Micro controller) の3種のファミリがあり,Cortex-A は複雑な OS やユーザー アプリケーション向けの最高性能のアプリケーションプロセッサ ファミリ,Cortex-R はリアルタイム システム向けの組み込み用プロセッサファミリ,そして Cortex-M は コスト重視のアプリケーションに最適化された組み込み用プロセッサのファミリです.

このうち特に Cortex-A シリーズを内蔵した SoC は,BeagleBone などの比較的高性能なシングルボードコンピュータに使われており,各種 Linux や Android OS などを搭載して高度なプログラミングを個人でも楽しむことが可能です.

また,Cortex-M シリーズを内蔵したマイクロコントローラは, NXP, ST Micro といったメーカから安価で使いやすいチップを多種ラインナップしており,個人でも非常に使いやすくなってきています.

Cortex-M シリーズ (www.arm.com より)

 参考文献